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最後のデモシカ教師の不謹慎発言

かつて教師に「でも」なるかぁとか、教師に「しか」なれない、という理由で教師になり、学校現場に彩りを与えていたデモシカ教師。そのデモシカ教師の目で現在の教育の裏をあばき、悪態をつく(だけ)!なお、このブログはリンクフリーです…

「教育困難校」の憂鬱

 これは以前俺が一泊二日の人間ドックにいったときに、同室になったある県立の定時制高校の先生が話していたことである。(俺は中学の教員だから)当然入試の話になった。

 ある年、知的障害の生徒が入学を希望してきた。送り手側の中学校もさすがにヤバいと考えていて、事前に校長を通して相談があったらしい。その生徒は「勉強が全然できない」というレベルは通り越していて、自分の名前さえも書けないというのだ。それでもとにかく保護者共々高校進学を希望しているので、何とかしてほしい、何とかしましょう、ということで話が進んできたもののようだ。だが、学力検査の答案用紙に名前も書けない、というのではどうしようもない。下々でも(疑問を持ちつつも)いろいろ連絡を取り合って、受験番号も0と1(マルと棒、というべきか)しか使わないものを彼のために特別に用意し、どうひっくり返っても試験を受けさえすれば大丈夫、という態勢を整えたのだった。
 ところが、いざ本番の時、件の生徒はその受験番号さえも書けなかったのだ。つまり全くの白紙。そして当然、合否判定の会議で問題になった。管理職サイドとしては(県からのお達しもあって)定員割れの高校だから何としても合格させなければいけないと言うし、兵隊の方は、いくらそんなお達しがあったからといって、ここまでできない生徒を受け入れても本人にとっても学校にとっても一体何の意味があるのか、ということで不合格を強硬に主張したらしい。激論が戦わされること2時間、やっとの事で校長を説き伏せ、不合格にすることを承知させたという。ところが、今度は校長が県教委に連絡、内容を説明し、電話先の人物を説得し不合格を出すのを承知させるのにさらに1時間かかったというのである。
 その先生は、「とにかく何のためにここまでして県が定員を満たすことにこだわるのか、まったく理解できません」とため息混じりに言っていた。俺も、そこまでしてでも合格させなきゃいけないという内幕を知ってビックリしたものだった。
 だが実際、小学校で落ちこぼれ、中学校の内容も実際に使えるかどうかは別として半分ぐらいしか理解できず、学年が上がるにつれて何をやっているのかさっぱりわからなくなるような生徒たちが、高校のより高度な学習内容をどうやって理解するのか、というよりそれを身につけることで彼らの将来にどんな意味があるのか。よく話されることだが、「教育困難校」といわれる高校ではまず数学で掛け算九九、英語ではアルファベットから始めるのだ。上位校で何から始めるかを考えてみれば、同じ「高等学校」とひとくくりにするのは無理!としか言いようがない。
 この他にも、どうにもならない中学生を、何しろ定員割れの高校は受け入れなければならない、という状態はかなり困った現象を引き起こしてきた。問題行動おこしまくりの奴や不登校の生徒でもどんどん高校に進学する。まじめにやってる奴らはそれを横目で見ながら黙々と授業を受けてはいるが、何かの時には「まじめにやってるのが馬鹿みたいだよね」なんてつぶやく(三者面談なんかで保護者がそうおっしゃる場合だってある)。
また、中学校でさえもハジケている不良どもが、高校に行ったらああもしたい、こうもしたい、と「夢」をふくらませて入っていくんだから、高校の方だってたまったもんじゃない。そして、たいていの場合そいつらはいとも簡単に中退して人材の不良債権と化してしまうのだ。

 だが目出度いことに、うちの県では数年前からこの流れに歯止めがかかったようなのである。ウチの校長が以前いた中学にどうにもならない不良が10人以上いて、ソイツらが定員割れ(それも大幅に)の高校に志願したときに、事前に「コイツらを合格させないでくれ!」と申し入れたところ、ちゃんと不合格にしてくれたというのだ。その話を聞いたとき俺は進路指導主事だったのだが、初耳だったので驚いて聞き直したが、最近方針が変わったらしい。まあ、少子化も進行し定員定員とこだわってばかりもいられなくなったのかも知れないが、県教委も時にはいいことをするモンだな、と感心した。

 閑話休題、数年前、ある「教育困難校」に進学した高校2年生の女子が中学校を訪ねてきたことがある。
「あたしね、今学年でトップなんだよ!」
「なに~~~?そんなのありえないでしょ。」
「ホントだよ!(ニコニコしつつ話すその態度で本当であることが知れる。)それでね、1年に入学したときに7クラスあったんだけど、2年になってクラス替えしたら5クラスになってたんだよ!」
「へぇぇぇ~~~!そんなにやめちまうのか?」
その生徒は中学校時代はトラブルメーカーの最右翼だった。頭悪いのに自己顕示欲強くてすぐバレる工作を陰に回って繰り返し、女子の人間関係はコイツ一人のためにいつでも大混乱、という困った生徒だったのに、その頃の険のある表情はすっかり落ち着いてゆとりのある雰囲気。あんなクソガキをこんな風に変身させてしまうんだから、高校の先生はすごい!しかもクラスが2つも減ってしまうほどのすったもんだを繰り返しながらよくぞ、とそのときはしみじみと「教育困難校」の先生方に頭の下がる思いであった。

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進路指導の悔恨

 そもそも「進路指導」は生徒を高校に行かせるための指導ではない。それはわかってはいる。重々わかっているのだが、いつの間にか
目的は高校進学!!」になってしまうことがままあるのだ。そして、その大きなムーブメントに巻き込まれて無駄に高校に進学してしまう生徒の何と多いことか。
 俺が担任として受け持った3年のクラスの中にも、必ずそういう生徒が一人か二人はいて頭痛の種になっていたものなのだが、どうすればよかったのか…。

事例1
 かなり昔なので細かいディテールは覚えていないが、とにかくその生徒は勉強が苦手で嫌い。細かい悪さはするけど一応不良というわけではなく、十分に普通の生徒の部類であった。だが、とにかく勉強がいやで低学力(まだ追放されていなかった校内の業者テストの偏差値も36~7といったところ、つまりほぼどん底)。口癖は「めんどくせー」「やりたくねー」「高校なんか行きたくねー」。というわけで、本人も秋の三者面談の折に一旦は「就職」という方針を定めた。だが、学年主任(女性)から
「何を言ってるの!高校に行かせなさい!」という圧力が俺にかかり、俺としても半ば仕方なく、本人に限らず保護者にまでも陰に陽に高校進学圧力をかけまくったので、彼は不承不承受検(県公立校では受ではなく受)を決意し、近所の工業高校に進学した。
 だが、その学年を卒業させ、新しい学級も軌道に乗ってきたと思われる6月、その生徒は中学校に俺を訪ねてきた。
「先生、俺高校やめちゃったぜ!」
「え?!(もうかよ?!まだ2ヶ月もたってないじゃん!)」
「今仕事してんだ。工務店で。」
それ以上のことは覚えていないのだが、ただただその、近況を得意げに報告する生徒(だった奴)の生き生きした雰囲気と明るい笑顔が、ものすごく強く俺の印象に残ったのだ。コイツの、こんなにも屈託のない晴れ晴れとした笑顔を俺はそれまでに見たことがなかったじゃないか?!!そのとき何の脈絡もなく俺は、(ああ、高校なんか行かせるんじゃなかった!!高校進学はコイツにふさわしい進路じゃなかったんだ…)と強く思ったのであった。だが、その頃の俺はペーペーで、初めて受け持った3年生。自信満々に「高校、行・か・せ・な・さいっ!」と宣う学年主任のおばちゃん先生と違う方針を立てようなんて毛ほども思わなかった。

その後、3年生を担任するたびに脳裏にそいつの顔が去来する。そして似たような奴に、内心(コイツは高校なんか行く必要ないのにな…)と思いつつも、親の願いやら友達関係やらのまわりに流されて何となく進学するおバカ生徒の片棒を担ぎ、何人の無意味な進学を見送っていったことか。

事例2
 その中でも最新の奴は、いかにもジャイアンって感じの体のでかいイジメっ子にして、親分肌で面倒見がいいという二面性を持った男子生徒である。根はいいやつなんだけどなぁ…。弱っちい奴や物静かな奴は仲間と寄ってたかって弄っちゃうがそれがイジメにつながるという想像力は欠如している一方で、こっちが生徒にいろいろと文句を言ったりすると(それが自分のことでなくても)食ってかかってくる、という扱いづらい奴だった。もともとの頭はそれほど悪いわけではないのだが、やはり勉強がいやで学校はキライ。結局、学校というシステムの中では抱えきれない生徒なんだな。まあ俺としても、高校行かせないで就職でいいんじゃないでしょうか、ぐらいの気分でいた。しかも学年で最も親しい仲間の一人が絶対に就職するという決意のもと、断固として進学を拒んでいるのを見て、本人も2学期後半から激しく揺らぎはじめた。三者面談でも煮え切らない態度でこっちとしても時期的にヤバくなりそうになったので、「はやく態度をはっきりさせろ。口がなくなるぞ!」とせっついた。
 ところが、高校行きたくないのは本人だけ。まわりはみんな高校に行ってほしいのだ。親もそうだし、なんといっても学年主任が妙にしゃしゃり出てくる変な奴で、途中から勝手に担任を通り越して横槍を入れ始めた。俺は「(高校)行かせてもたぶん無駄ですよ」と言ってやったが、この主任は「まず行ってみて、辞めるのはそれからでも遅くない。高校はやっぱり無駄だった、なんてことは行ってから自分で(親共々)感じさせるべきだ。
中学校のせいで行かせてもらえなかった、と後で言われちゃまずい」という驚くべき?理屈を並べるのであった。結局、本人の希望するところの「美容師の資格」を取る上でも高卒の肩書きは有利だ、という母親の意見に従い、彼は高校受験を決意したのだった。そして、止めの私立受験で「どうせ行かないんだから」とまともに取り組まずに不合格になったりするなど周囲の気をもませつつも、地元の工業高校に進学した。
俺は最初っからこの話はうまくないなぁ~、というモードだったので、とにかく卒業期には何度も「オマエ、高校やめんじゃねーぞ」と念を押したが、それに対して本人は「やめねーよ。かあちゃんと約束したんだ。」という反応であった。で、どうにかなるのかな、と納得していたのに、やっぱりコイツ、一学期が終わる前にはもう辞めていた。そして、ガソリンスタンドでバイトしつつ中型二輪の免許を取り、今では仲間と400ccのバイクを転がしてその辺でとぐろを巻いているのだ。やっぱり本人が気が進まない進学はダメだな。やれやれ…。
 

 この他に知っているいくつかのケースも、ほとんど略同型である。結局のところ、親も中学校も親戚も友達も、この手の連中の人生をもてあそんでるんじゃないか、という気がする。本当に自分にふさわしいことが何なんだか判断する能力がない。というより、そういう判断力を身につけさせようとする大人が周辺にいないではないか。高校いってもどうせ勉強しないでケータイやりながら時間つぶしてる奴もいっぱいいる。就職させてもすぐ辞めちまう。中学を卒業後にやりたいこともなく、行きたい場所もなく、無気力にフラフラ遊んでる奴だって。そんなんだったらその若いエネルギーを労働生産力に回すべきなのに、そういう地に足の着いた確固たる思想を彼らに吹き込む(だけの自信を持った)大人がいない。大人がガキなんだ。肝が据わってない。お前はこうだ、と人一人の人生を規定するなんて怖いもんね。
つまり自分がどんな奴なんだかは、結局は自分が判断しなきゃいけないのに、「判断しなきゃいけない」という状況さえも見られる能力がないままに放置されていると言ってもいい。そして気づいたときにはニート、フリーター、ワーキングプア、パラサイトetc.への道が待っている。将来、年寄りがみんな死んじまったら、あとに残されたコイツらはどんな日本を作るんだろうか(とまではいかないにしても、どんな人生を送るのか)。

そして、たかが高校進学ひとつとっても、そこまで考えた上で進めていくのが「進路指導」じゃないんかい?という気もする。それとも中学校がそんなところまで面倒見る必要はないか…。

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子供が可愛くないのか?!狂った受験作戦

 今年度の高校入試が本番を迎えている。今週は県立高校の前期入試がある。みんな頑張ってほしいものだ。
ところが、本人の健闘をなんと思っているのか、(それなりに)必死で高みに登ろうとする我が子の足場を蹴飛ばす親がいるなんて信じられるか?!いるんだよ、そういう鬼畜が!

 県立が始まる前に私立の入試がある。私立一本の単願と県立滑り止めの併願にわかれる。県立が第一志望の生徒は私立の併願を受けるわけだ。その結果がもう出ている。合格した者はセーフティネットを張って県立に挑戦するはずなのだが、その前に合格した私立高校に県立の結果発表まで待ってもらう「延納願い」を提出して手続きをしなければならない。場合によっては3万ないし6万の「延納金」を払い込まねばならない。ま、関係者は皆さん先刻ご承知のことであろう。我が家においても倅どものために私立高校に「献金」したのも記憶に新しい。
しかし生徒は中学校の授業があって、いちいちそんなの行かないわけだから、これはどう考えても親の仕事でしょう。
それをやらない親が今回のウチの中学の3年生の中で続出しているのだ。どういうこと?
<その1>
 忘れていた!ある女子高に合格した生徒の場合。担任が生徒本人に確認してみたら心許ない返事だったので、家に帰ったら親に確かめて明日報告しろ、と言っておいたら夜親から電話がかかってきて「忘れてました!期限が切れてしまいました!どうしましょう?!!(オロオロ)」という有様。結局ウチの校長が相手校に頭を下げて何とかして日程を融通してもらったようだ。
<その2>
 どうせ私立になんか絶対に行かせないんだから(延納金なんか)払う必要ないでしょう!これも別の女子高に合格した生徒の話。この生徒は日頃から生活態度がだらしなく、教師の話も聞いてるんだか聞いてないんだかよくわからない、いわゆる「ヘン」な生徒。こりゃやばい、というわけで、本人に確認してみると、とにかく親が、「私立には絶対行かないんだから、受験料を出さない。どうしても受けたいんだったら自分で受験料を出せ」ということで、生徒が自分の小遣いだかお年玉で払ったらしい。そして、さらに親に確認してみると、「自分で勝手に受けたんだから、延納料も自分の小遣いで出せ」と言っているというのだ。本当だとしたらどういう家庭なんだろう。子供が「ヘン」になるわけだよね、とも言いたくなるではないか。

 そして、いずれの場合も、その日の午後から本人たちに中学の授業を切り上げさせて「今すぐ自分で手続きをしてこい」と高校へ飛んでもらったのだ。ちょっと可哀想じゃないか?可哀想だと思わないか?俺はまあ担当学年じゃないから「気をつけてな」と職員室の窓から声をかけて見送っただけだったが、後ろ姿を見送るのがなんだか切なかったぞ。

 本当に、この頃の親には理解のできないことを言ったりやったりするのが多い。学校に文句を言ってくる「モンスターペアレント」もおかしいかもしれんけど、こんな形で子供に冷たい仕打ちをするのってもっと変じゃないかい?我が子が可愛くないのかねぇ…。というか、大人の行動では絶対にないと思う。いったい何のために「滑り止め」を受けさせるのか。県立の本番で不必要に上がってしまったり、体調不良だったりするときの「安心料」じゃないか。護送船団方式と言われるのも重々承知だけれども、なにしろ受験では何があるんだかわからないんだから、大人の立場でできる手だてを用意してやっているんじゃないのか?俺が最近担当した3年生でも、何度その説明をしても聞き入れないバカ親が複数いたが、とにかく「受験作戦」の手順が、保護者の「狂った」意識によって狂い始めているのを感じる。

というわけで急遽、延納手続きが完了しているかどうか他の親にも確認することになったのだが、こんな不条理なのって、他の学校でも頻出しているものなんでしょうかね?俺には信じられません。

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教育委員会のあきれた体質

 毎年、今の時期になると県教育委員会では「県公立高校入試要項説明会」というのを開催し、全県のすべての中学校の生徒指導主任を集めて公立高校入試の説明をする。今年は、その説明会の中で聞き捨てならない部分があった(らしい)。

 例年、県立高校の入試では「合格したら必ず入学する」というのが約束であり、それは「進路保護者会」を初めとして様々な機会に口を酸っぱくして生徒や保護者に伝えられる。万一県立高校に合格して、入学を辞退し、例えば私立高校へ進学しようとする中学3年生なんかが出現したら、それこそ大変!その生徒の中学校には県教委から直々に強烈な指導が入り、つまり「私立高校入学をやめさせろ!」という圧力がかかるのだ。
 一見、理不尽に感じる人もいるであろう。「そんなの、個人の自由じゃん」という声が聞こえる。い・い・で・す・か、自由じゃないんです!!県公立高校の場合は定員割れは困る。なぜなら、基本的に税金で運営しているからね。生徒40人なら40人分の予算が組んであるのだから、39人でスタート、ということになれば、それは「税金の無駄遣い」ということになる。百歩譲ってそれは許せるとしても、辞退したそやつのせいで不合格になった生徒はどうなるのか。実際に人一人の人生を大きく変えてしまっているのだ!それだけでも許せないのに、しかもそういう想像力もなしに大人になってもらっちゃ困るでしょ?

 だが、このごろは毎年そういう不届き者が出ているのは確かで、上記の説明会でも、「絶対にそんな生徒を出すな、万一公立をやめて私立に鞍替えしたいという生徒がいたら合格発表前に志願を取り消させろ!」と俺たちは例年強く強く申し渡され続けてきた。

ところが!


 今年は、進路保護者会の資料などにそういう文言を印刷してくれるな、というお達しである。どういうこと?
 つまり、昨年もそういう馬鹿野郎がいたのだが、事もあろうにその親が、「そういう指導は違法じゃないか!」とねじ込んだという事件があったらしい。だからどうなんだ!とこっちは叫びたくもなるのだが、県の教育委員会ともあろう組織は、そんなことは「あってはならないこと」らしい。「もしそういう親が裁判を起こしたりすれば、こっちの指導には明確な法律上の規定がないから負けるに決まっている、そんな資料を証拠物件としてあげられれば困る」ということであろう、というのがウチの校長の観測である。情けない…

 それなら、今後はそういう指導はしないほうがいいのか?その方針をやめてしまっては県公立高校の入試制度そのものが大きく崩れてしまうではないのか?
 「そのとおり、だから今まで通りの指導は続けてほしい」、と県教委はおっしゃるのだ。ただし、「口頭で」だとよ。そんなの無理!相手はズルを承知で掟破りを仕掛けてくるのだ。今どきのモンスターペアレントをナメている。こっちだって、言った言わないの水掛け論を避けるために、再三お便りや資料で活字にして喧伝し、挙げ句の果てには「(県立に)合格したら必ず入学させます:保護者捺印」という念書まで取って事に臨んできたのだ。それをやっちゃいけないの?何が悪いの??!!やらなかったらどういう事になると思ってんの?!悪いのは誰なの?なぜ、県教委はそういう馬鹿連中からの予想される圧力に対抗する措置を考えようとしないのか?!教育委員会がそんな体質だからいつもいつもやった者勝ちの論理の前に手も足も出ないんじゃないか。議会に条例案の提出とか、なんかわからんが、もっと断固たる姿勢を示してほしいものだ。

 この「入試要項説明会」(かなり紛糾したらしいが)には、実際には俺は参加しなかったが、この会議の瞬間にまたしても「学校の権威」が一つ音を立てて崩れていくことになったのは間違いあるまい。

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異常な受験

 今まで出会った3年生の中で、もっとも「異常な受験」をした男のことを書き留めておこう。自分のまずかった部分の反省も込めて。もう10年以上前のことだから時効だよね。

 俺が担任したその生徒(以下A)は生徒会長であった。はっきり言って頭も悪く学業不振。だが、まわりの生徒にいやらしい奴が多く、そいつらが3年になってから面倒事を避けて入試に専念できるように、との思いを込めてうまいこと祭り上げてしまったのだ。そして本人はそれに気付く能力さえない。給食でご飯粒を爪弾きしたり、箸を忘れた、と言っては牛乳用のストロー2本を箸代わりにして飯を食ったりして俺に文句を言われるような正直困った生徒。禁止されているチャリ通を隠れてこそこそ続け、再三指導しても全く従わない。その他にも校則に触れるようなことを次々にしてくれる。掃除もさぼる。
 ようするに品性下劣で、通常に想定される生徒会長としても器じゃないのだ。

 だが、最悪の事態は11月の三者面談用に提出させた進路希望の事前調査用紙から始まった。Aは提出期限を過ぎてもいつまでも出さなかったのだが、ついにせっぱ詰まって提出した用紙を見て俺は絶句した。第一希望から、「開成」「灘」「ラサール」「海城」「武蔵」……と超難関校がズラッと並んでいるのだ。
 すでに他の生徒から聴き取った会場テストの偏差値とそれに見合った高校との相関関係をほぼ掌握していた俺はこんな大事な場面での荒唐無稽な冗談(としか思えなかった)が許せず(あれほど記念受験は止めろって言ったのに!)、思わず怒気を発して「何をふざけているんだ!真面目に書いたのかよ、これ!」と迫ったのだが、何とAの返答は「ふざけてませんよ、真面目です」そしてその表情!!まさしく(何を言っているんだこの教師は)という怪訝そうな表情に俺は混乱し、一瞬思考が停止してしまった。

 これは大変である。このまま放っておけない、というわけで、本人の説得・保護者の意向確認の前に改めて大至急で教科担当教師からの情報収集をしてみると、やはりAはお勉強ができない方なのだ。理科の教師が言った、「あいつは能力が高いわけない、だって教科書読ませると漢字が読めないもん!」つまり国語は言うに及ばず、理科の教科書に出てくる漢字が読めないということだ。
 リズム感なく体育祭の入場行進ではマーチにあわせて足踏みができない、などこれまでにも「コイツ大丈夫か」と思わせる言動を見てきた俺や学年主任としては、「頑張って受験させる」ではなく「身の程に合った学校を選ばせる」という方針を固めた。

 まず、本人と面談する。
「君ね、これ(志望校一覧)、親は知ってるの?」
「なんでですか?」
「だからね、たとえばラサールとか灘とか書いてあるよね。万一ここに合格すると自宅からは通えないでしょ。」
「そうなんですか」
「(ふざけんなよ、ここは関東だろ!とわめきたい気持ちを押し殺し)そういう可能性も考えて、寮のこととか、下宿のこととか、月々の生活費をどうするとか、親とも相談してあるの?」
「してません」
「じゃ、勝手に書いたのか?」
「いや、親は知ってますよ」
「なんて言ってるの?」
「いいんじゃない、って言ってます」
「(深呼吸をして気を落ち着け)ああそう…(ダメだな、こりゃ。いや、嘘かも。ここで引き下がるわけにはいかない)…それで、成績のほうはどんな状態?」
「え?」
「だからさ、××テスト(本県の会場テスト最大手)の偏差値とか、塾の先生がどうおっしゃっているとかなんだけど?」
「××テストは受けていません。でも首都圏模試では一度70を取りました。」
「(信じられない!ウチの県では××テストを受けなければ私立高校の事前相談にも行けないのだ。しかも「70」が一回だけ?Aの志望校はどこだって72でも75でも、何回取ったところで安全圏ということはないんじゃないのか?誰もが必死で模試を受けたりして弱点克服にしのぎを削っているんじゃないのか?!第一コイツが70も取るなんてあり得るのか?だが、なおも抑えて)ああそう、じゃ、その結果の個票を持ってきて見せてくれるかな。」
「(やや苛立って)塾の先生もいいって言ってるんですよ」
「うん、だからさ、その個票持ってきて見せてくれる?こういう事は確認が大事なんだから。」
「おかあさんがもっているんで、どこにあるかわかりませんよ。」
「(は?)出してもらえよ。」
と、こんな調子で、とぼけているのか、本気なのか、人をバカにしているのかさえ、さっぱりわからない。

 Aの勘違いをどうにかせねば、という思いを強くしてその後の母親・本人との三者面談に臨んだ。父親は役人、母親は小学校の教師であり、少しは状況を理解しているはず、と期待したのだが、なんだかまるで他人事なのだ。まるで評論家のように自分の子供のことについてお話しなさる。非常に違和感が強い。
 それでも、何度か面談や家への電話を重ねる中で、①本人は誰に吹き込まれたのか、高校に行くなら超一流校以外は行く意味がない、開成のような学校以外はK校(県下有数の公立進学校:例年の東大合格10名前後)でもT校(超最底辺教育困難校:万年定員割れで自分の名前が書ければ合格)でも同じこと、という歪な考えに凝り固まっている、②そういう超一流高校の入試問題集が自室の本棚一つ分ぐらいあるが、キレイなまま全然手をつけてない、③どこの模試も受けたことがなく、二言目には「塾の先生が」と言っているがそれは嘘で、塾なんか行かせたこともない、④もしどこもダメだったら2次募集でT校(前述)に行くと言っている、⑤模試の70というのは、一回だけ添削問題を提出したときの評価かなんかのことらしい、などの実態がわかってきた。もちろん個票の提出なんかなかった。

さらに困ったことに、校内での実力試験の日になると、Aは学校を休むのだ。中間も期末も、つまり2学期に行われた全4回の「学力テスト」をついに彼は完全にサボってしまった。こちらもいろいろ手を尽くし、再試とかでAの実力を測ろうとしたのだが、友達から問題を手に入れて答えを覚えたり、放課後になるとあっという間に校内から消えたり、捕まえても白紙で提出したり、「そんなテストに何の意味もない(そっちになくてもこっちには大ありなのに!)」と言い放ったり、と彼なりの様々な「努力」をしてくれたわけだ。
 おかげで2学期の成績は全滅、うっかりした公立高校は内申点が危なくて受験できない状況に追い込まれた。しかし、結局そんな中から類推可能な彼の学力はまあ「下の中」くらいか、ということはわかってきた。
 そしてさんざんの紆余曲折があったものの、12月中旬の第2回目の三者面談までにはどうにか県内私立の中堅校(それだって彼にとっては、素手で完全装備の兵士と対決するようなもの)をいくつか受験するオーソドックスな計画に落ち着いた。
 ところが、である。

 2学期の終業式前日までに提出することになっていたあらゆる入試関係の提出書類をAは持ってこないのだ。もう今日で計画表も私立高校の願書の下書きも、内申書の書式も、出さなきゃ冬休みになってしまう、という緊張感が頂点に達した瞬間に、Aが持ってきた「受験計画書」を見て俺は地面が崩れ落ちるような気分を味わった。
 そう、Aの受験しようという高校は最初の彼の思いのとおりに「戻って」いたのである。(ただ、ラサールなど遠隔地の高校は省かれ、替わりに早慶の付属校がいくつか並べられていた。そして、第9希望に「T校(前述)」が加えられていた。
 あり得ない!これだけの受験をすれば30万近い金がかかるはずだ。金を出す親の方がGoを出すはずがない、と頼みの綱の家庭に連絡を入れると、父親が「もう、彼を信じてやりたいようにやらしてあげることにした。駄目だったらT校に行くとの約束も取り付けた」という。もしかすると両親は家庭内暴力に耐えかねてギブアップしたのかも知れないが…こっちもさすがに父親の話の内容とニュアンスを聞いて疲れ果て、本人には高校の願書の下書きを今すぐ家に帰って取ってこい、と指示した。だが、その日の午後、Aは俺の前に姿を見せなかった。
 次の日(冬休み初日)の朝、俺は烈火のごとく怒ってAの家に電話を入れた。そして、学校で待っているから絶対に午前中に願書の下書きを持ってくるように約束させた。
 だが!待てど暮らせどAは来ないのだ。Aの家に連絡すると、親が出て「もう中学に行きました」というではないか。大変、これは探しに行かなければ、と校舎を出て駐車場に行くと、Aがいる。隠れようとしている。
「何してるんだ。」と呼びかけると渋々出てきた。手に書類を持っている。
「今、下書きをしてたんですよ。」
「とにかく見せろ」
というわけでAの持っている書類を見ると、それはある慶応の付属校の願書であった。その願書は志願理由をかなり長文で記入する欄があり、Aはその作文ができなかったのだ。俺のところに持ってこられなかったのも納得だ。しかし他にも早慶を受ける生徒は俺のクラスにいて、そいつらはそんなもの楽々クリアしたのだが…。つまりこういう学校は願書提出の時点でもう選抜が始まっているということのようだ。
 俺はAの作文の手伝いをし、しっかり清書して提出するよう指示をした。目の前が真っ暗になりそうだった。

 何でこんな事になったのか。Aは中学校に入学以来、はっきり言って「劣等生」の部類だった。だが、誰かが豚をおだてて木に登らせたのだ。それはAの通っていた中学校の学区域にある独特の雰囲気。そこは新しく開発されたニュータウンで、学歴も収入も高く、鼻も天狗のように高い住民が集まって出来た場所である。なにしろ、4月8日に15歳の子供がどんな制服を着て玄関を出るか、が「母親の通信簿」といわれていたぐらいだ。子ども達もチューンナップされたレーシングカーのように競争に明け暮れ、自分の実力の2ランクぐらい上の高校を受験し、驚くべき事にかなりの確率で合格していた。もちろん高校に入る頃には燃え尽き症候群、というのも珍しくなかった。
 そういう生活の中で生徒達はいつもギスギスしていて、何かバカにできることはとことん馬鹿にし、イジメやからかいが横行していた。Aはからかわれる対象でもあった。その証拠として、彼は正統派の対抗馬を選挙で破って生徒会長になったのだ(この論理、教員なら肌で理解できるであろう)。
 ここからは想像の域を出ないが、Aは生徒会長になったことによって、自分の実力を過信してしまったのだ。何しろ行事のたびごとに全校生徒の前で話をしたり、学校の代表として他校の優秀な生徒達との交流が積み重ねられる。お膳立てはまわりの教師や生徒会の副会長がすべてしているのだが(周辺から愚痴はたくさん聞いた)、それには気付かないから自分はいい気持ちになれるし、優秀になった気がする。そして、これまでつきあったことのなかった、本当に優秀な連中の影響を受け、いつしか超一流校に進学する自分を夢見るようになってしまった。当然、現実が見えてしまう「学力テスト」は恐くて受けるわけにはいかなかったのだ。

 当然だがAの受験はすべて失敗し、結局約束どおりT校を受けることになった。AはT校の願書の下書きを俺のところへ持ってきた。公立高校の願書は志願先の高校名を自分で記入するようになっているのだが、彼の書いたT校という字は、ああ、何ということ!…漢字が間違っていたのだ。俺は、Aが可哀相で本当に涙がこぼれそうになった。

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内申書について

今中学校では高校受験まっただ中です。
調査書(内申書)も色々変わったけど、かつて正月休み全返上で作ったのが今ではコンピュータで入力して終わり。

そういえば思い出したのが大学受験の時の内申書です。
高校卒業時にご多分に漏れず受験する大学を一つ多めに申告して、一通余計にもらい、中を見ちゃいました。
 その時の所見欄には「まじめな生徒である」とかなんとか、当たり障りのないことが書いてあったのですが、その後進学した大学を2年でやめてしまい、音楽大学を受験するためにあらためて出身高校に内申書をもらいに行って、またもや余計にもらって中を見たところ、その同じ所見欄に「音楽的才能に優れている」と書いてあったのですよ。その時には(音楽の成績2だか3だったし)こう書かれてもねえ…と苦笑してしまったものですが、今思い出してみると、、、
 先生っていうのは有難いものだなあ、としみじみ思います。高3の時の担任の先生はなんだかポーッとした感じの人でしたが、この一筆に込められた思いは、本当に有難いものだと思います。こういう心を忘れては教師をやってはいけませんね。

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